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Harmonia

オリジナル小説

ミラクル 7 


 窓から差し込むひかりのまぶしさで、目が覚めた。
「……」
 背後からきつく抱きしめてくる腕からもぞもぞと抜け出して、上半身を捻って枕元の目覚まし時計に手を伸ばすと、時計の針は十時をとうに回っていた。
「……」
 裸のままで眠る育都も目覚めたのか、薄く目を開く。
「……おはよう」
 夢見心地の、蕩けそうな笑顔が普段よりもずっとあどけなくて、可愛いらしくて、胸がきゅんと締め付けられた。
「おはよう」
 吸い寄せられるようにくちびるにキスしたら、お返しとばかりに強く吸い付かれる。
 またベッドのなかで、抱き合いながら散々キスして。熱を帯びた身体に触れ合っていたら、俺の腹の虫がぐうぐうと鳴き出して、それをくすくすと笑い合って。
「朝飯作るから、待ってな」
「ありがとう。……シャワー浴びてくる」
「ああ」
 くしゃくしゃに髪を撫でられた後、キッチンへと向かう育都を、いとおしさが溢れるままに、見つめ続けた。


 トーストにベーコンエッグとサラダ。それにブルーベリージャム入りのヨーグルト。
 シャワーを終えて部屋に戻ると、すでに朝食の準備を終えた育都がコーヒーを淹れている。
「いい匂いだね」
「昨日買ったばかりの豆だから、絶対に美味いはず」
 お揃いの大きなマグカップを受け取って、育都と向かい合って座る。
「今日はなにする? どこか出かけるか?」
 休みが重なって、久しぶりに一緒に過ごせる土曜日の朝だった。
「それもいいけど、……やっぱり家のなかがいい」
「馨はそう言うと思った。……それなら、またやるってことで」
「馬鹿っ、」
「なんだよ、馨もしたいくせに」
 真っ赤になって視線を逸らす俺を、笑いながら見つめてくる。
「育都、……あのさ、」
「ん、」
「昨日は、ありがとう。健に会ってくれて、嬉しかった」
「……」
「大切な友達なんだ。本当のことを言えば、育都にも健のことを知って欲しかったんだと思う。……未練なんて、全然ないよ。俺には、育都がいるから」
「ああ、分かってる」
「運命って、育都が言っただろ。……俺はさ、育都と出会えたことが、奇跡みたいにすごいことなんだって、昨日の健を見て思えたんだ」
「……」
「俺を見つけてくれて、……ずっと待っていてくれて、ありがとう」
 育都の瞳をしっかりと見据える。まぶしそうに見つめ返す、その穏やかでやさしい瞳が嬉しかった。

 ずっと心のなかで感じていたことを、ようやく言葉にできた。
 胸のなかでもやもやとしていた雲が瞬時に吹き飛ばされ、心が晴れ晴れとする。
 
「健は、いつ出会えるんだろうな」
「そうだな、……そう遠くはない日、だろうな」
「えー、育都ははっきり見えたんだろ? 俺にも教えてよ」
「ダメだね。こっちにも守秘義務ってもんがあるんだよ」
 どんなにねだっても育都は教えてくれない。それならと、いつか来るふたりの再会の場面を勝手に想像して、俺はお喋りを延々と続ける。
 そんな俺の妄想話を育都は「くだらねえ」と鼻で笑いながら、それでも上機嫌で耳を傾けている。

 こんな無為な時間を過ごすことさえ、無上のしあわせが溢れている。
 ふたりがいま、ここにいること。
 その、すばらしい魔法のような時間を、この奇跡を噛みしめながら、俺たちはいつまでも笑い合っていた。



おわり


 



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Posted on 2018/09/14 Fri. 14:03 [edit]

category: MAGIC

thread: BL小説  -  janre: 小説・文学

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