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Harmonia

オリジナル小説

ポラリスとばらの花 15 


暗い部屋で目を覚ました。隣にいたはずのあたたかな身体を探して腕を伸ばしたけれど、そこには何もない。どうしようもない淋しさに襲われて、もぞもぞとベッドから這い出た。

ファンヒーターが緩くかかった部屋は、そう寒さを感じなかった。床に散らばった服を身につけ、廊下に出るけれど、やはり人の気配がない。階段を下りて玄関まで歩くと、診察室のドアから灯りが漏れていた。その明るさに、ほっとする。

ノックして、恐る恐るドアを開けた。診察室には誰もいない。さらに奥まで進むと、玲雄がケージに入った犬を撫でている。

晴夏に気づいた玲雄が、にっこりと微笑んだ。おいで、と手招きされる。
ケージの中には蹲っている茶色い中型犬がいた。いかにも雑種っぽい、愛嬌のある顔つきだ。落ち着いた目をしている。

「玲雄んちの犬?」

「いや、入院してる子。もう十六歳だから、そろそろ寿命なんだ」

「死んじゃうの?」

「もって一週間くらいかな。最期は家族の元に帰してあげるから、今夜でお別れ」

「そっか」

「よく眠れた?」

「うん、熟睡した」

手を洗った玲雄が、晴夏の髪をくしゃくしゃと撫でた。そんな動作一つ一つに、晴夏の心臓がざわめく。

「すげえ気持ちよさそうに眠ってた」

身体拭いても突いても全然起きないし、と玲雄が笑う。

「昨日、寝てなかったから」

「寝ずにうちに来たのか?」

眠れなかった。玲雄があの男と一緒にいるって考えただけで、苦しくて一睡も出来なかった。

ごめん、と玲雄が言って、唇が重なる。頭を抱きしめられる。

「ちゃんと、別れたから」

「え?」

「昨日の男と、別れてきた。もう会わない」

「……」

玲雄の顔を見つめる。見つめかえす玲雄の眼差しの甘さに、心臓が高鳴った。

「あんだけ好き好き言われたら、さすがになびいた。俺、単純だったんだな」

「…玲雄」

「晴夏のこと、いつの間にか好きになってた」

玲雄が真っ直ぐに見つめてくる。手が伸びて、頬に触れる。

「好きになってたことも気づかなくて、晴夏のこと待たせて、傷つけて、ゴメン」

頬を撫でる玲雄の手が、あたたかい。

「気づいたら、晴夏のことで頭がいっぱいだった」

ここも、と言って、晴夏の手を取り、玲雄の胸の上に置かれる。

「いっぱいになってた。晴夏が可愛くて。抱きしめたくて」

夢みたいな言葉が、玲雄の口から紡がれている。

「晴夏が、好きだ。俺と付き合って」

目の前まで顔を近づけて、玲雄が囁く。蕩けそうなくらい甘い表情と声だった。
こくりと頷くと、また涙腺が緩んだ。そんな晴夏に玲雄が優しく口づける。

「普段は冷静なのに、以外と泣き虫なんだな」

「玲雄の前だけだ」

「いいよ。他のヤツの前で泣かれるよりいい」

「その言葉、そのまま玲雄に返したい」

何度も何度もキスをした。玲雄の甘い唇が触れる度に、信じられないくらい幸せだった。

「玲雄、好きだ」

「うん、俺も晴夏が好き」

キスの合間に好きと何度も囁いて、徐々に深いキスになって、身体が再び熱を帯びる。お互いの両手が忙しなく身体中を這い回る。

「玲雄、もっとしたい」

吐息混じりに耳元で囁くと、玲雄がいいよ、と囁き返す。

「今夜泊まってく?」

この上なく刺激的な申し出に、晴夏の身体が震えた。

「いいの?」

「親父、今夜帰らないってさっきメールが来たから」

「くるみちゃんに電話する!」

急いで玲雄の部屋に戻って、姉に電話した。玲雄の家に泊まるから、親に言っておいて、と伝えると、姉はワオ!と叫んだ。声が大きすぎて、耳が痛い。

「父さんと母さんには私がちゃんと言っておくから、帰ったら詳細を説明しなさい!」

命令口調で言い切って、晴夏が弁解する余地もなくさっさと電話を切られる。姉らしい心遣いに、思わずにんまりと微笑んだ。



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Posted on 2013/09/08 Sun. 21:12 [edit]

category: ポラリスとばらの花

thread: BL小説  -  janre: 小説・文学

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