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Harmonia

オリジナル小説

ポラリスとばらの花 16 


部屋に戻って、もう一度玲雄と抱き合った。暗い部屋で、甘えるように縋り付いて。

玲雄に抱きつきたい、抱きしめたい、抱きしめられたい。玲雄の身体中に触れたい。キスしたい。髪を撫でたい。繋がりたい、一つになって溶けてしまいたい。これが性欲と言われるのなら、そうなのかも知れない。けれど、もっと身体の奥深い部分から、愛しいという気持ちが湧き上がってくる。

長い時間をかけて身体の隅々まで愛撫して、もどかしそうに求められるまで焦らしながら、完全に蕩けきった玲雄の身体に放出した。

玲雄を背後から抱きしめる。十四歳の今頃、こんな風に彼を抱きしめたくて、そう思う度に切なくて、苦しくて、暗闇の中、一人泣いていた。叶うあてのない恋心を抱いて、それでもほんの微かな希望だけは捨てないで、がむしゃらに生きてきた。まだ十七で、とても一人前なんて言えないけれど、それでも、あの頃泣いていた自分に、今のこの気持ちを伝えてあげたい。今、自分は、すごく幸せだと。



二人でシャワーを浴びて、リビングに移動した。二十畳くらいある大きな部屋は、キッチンと繋がっている。暖まるもの食べよう、と言って玲雄が作ってくれたのは、鍋焼きうどんだった。昆布と干し椎茸と鶏肉の出汁がおいしい。卵と天かす、かまぼこ、餅まで入っていて、二人してふうふう言いながら、黙々と食べた。お互い腹ぺこだったのだ。すごくおいしい、と言ったら、玲雄は嬉しそうに微笑んだ。

「でも玲雄が料理するなんて、意外」

「なんで?」

「なんか、全然生活感、感じられないもん、玲雄って」

玲雄が笑った。

「めちゃくちゃ生活感ある人生送ってるよ。小学三年生の時に母親が死んで、それからずっと炊事洗濯掃除は俺の仕事」

「そうなんだ。子供なのに、すごいな」

「親父が忙しいから、仕方なかったんだ。でも嫌いじゃないよ。料理は特に。こうやって晴夏においしいって言ってもらえたら、嬉しいし」

と言って伸びてきた手が晴夏の髪をくしゃくしゃと撫でる。その眼差しの甘さに、気恥ずかしさが込み上げてきて、顔が赤く染まった。そんな晴夏を優しく見つめ、可愛い、と甘い声で囁かれるから、ますます恥ずかしくなる。

「…玲雄、ケーキ食べたい」

この雰囲気を何とかしたくて、言った。玲雄はにっこりと微笑んで晴夏の頬にキスすると、コーヒー淹れてくる、と言って席を立つ。一人になって、ほっと安堵した。玲雄と想いが通じたことはすごく嬉しかった。でも、恋人になった途端、こんな風に接してこられるなんて、思ってもみなかった。玲雄が晴夏に触れてくる手も、声も、眼差しも、何もかもが甘すぎて、どうしていいか分からない。気持ちがまるで追いついていない。


コーヒーとケーキの箱を持ってきた玲雄の顔が、箱を開けた瞬間ぱっと輝く。毎週一緒にケーキを食べる時、玲雄はいつもチョコレートケーキを選んでいた。玲雄の笑顔が見たくて、姉に教えて貰ったおいしいケーキ屋で、ショーケースに並んでいた十五センチのザッハトルテを買ってきた。

「せっかくだからこのまま食べよう」

そう言って玲雄は晴夏にフォークを渡す。ホールのまま、二人でつついた。濃厚なチョコレートケーキは、口の中でとろりと蕩けるやわらかさで、ほのかにオレンジの香りがした。玲雄が本当においしそうに食べているので、嬉しかった。食べ終わった後、玲雄に後ろから抱きしめられて、何度もキスされる。チョコレート味の甘いキス。最初は軽くだったのに、徐々に息ができないくらいディープなものに変わって、玲雄の細い指先が、裾から侵入して肌に直接触れる。

「晴夏、もっとしよ」

艶めかしく動きまわる指先も、玲雄の甘く響く声も、妖艶に誘う眼差しも。晴夏のわずかに残った理性をいとも簡単に奪い去る。

ソファに玲雄を押し倒して、衣服を乱暴に剥ぎ取った。玲雄はうっとりと微笑んで身を任せている。もう、どうにでもなれと思った。照明を落とさないままの明るい部屋で、玲雄の白く露な肌にむしゃぶりついた。



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Posted on 2013/09/09 Mon. 22:45 [edit]

category: ポラリスとばらの花

thread: BL小説  -  janre: 小説・文学

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