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Harmonia

オリジナル小説

雲を抱きしめる 14 


 一回だけとは言え、長く激しく攻め立てられて、疼くような違和感が残ったままの身体を引きずるようによろよろと頼りなく歩く俺を「円座クッション届けてやろうか?」なんてからかいながらも、伸一さんはさりげなく隣で気遣い、駅までの道をゆっくりと歩いてくれた。
「横浜だったら、大学もこっち方面だったってこと?」
「ああ」
「ちなみに、どこの大学?」
「T工大」
「えーなんだよ伸一さんこそめちゃくちゃ頭いいじゃん。しかも全然イメージと違うし」
「そうかな?」
「T工大って、エキセントリックなひとたちの集団って印象なんだよね。失礼かも知れないけど」
「確かに個性的なやつは多かったよ。欲しいものは自分で作るのが当たり前って気風だし、ま、基本オタクだからな」
 そう言って、伸一さんが笑う。
「もちろん僕だってそんなオタクのひとりだったから、しょっちゅう大学に寝泊まりしながら友達とソフトウェア開発に熱中してたし」
「へえ。意外だな。全然そんなふうに見えないのに」
 懐かしそうに目を細めながら大学時代の思い出話を語る伸一さんが、いつもよりもずっと饒舌で、そんなことにも嬉しくなってしまう。
「なんか俺、伸一さんについて知らないことだらけだ」
「出会って間もないんだから、当たり前だろ」
「それはそうだけど、」
「いまはまだ知らない帆夏の一面を知ったら嬉しくなるし、きっとますます好きになると思う。だから、ゆっくりとおたがいを知っていけばいいんじゃないかな」
「……」
「それに僕だって、帆夏にいつか飽きられるんじゃないかって、内心ヒヤヒヤしてるんだ。そんな簡単に自分の手の内は見せられないよ」
「飽きるなんて、絶対ないよ」
「ひとの気持ちに絶対はないだろ」
 伸一さんが、きっぱりと言った。しばらくの沈黙の後、俺は頷く。
 どんなに好きでも、いつしか心は変わってしまう。それはもう、俺も知っているから。

 神妙な顔つきになった俺に、伸一さんが優しく微笑みかける。
「そもそも愛情って、すでにあるものじゃなくて、おたがいを想い合ったり時には衝突しながら、ふたりで作り上げていくものだと思ってるから。ひとが作るものだから、当然壊れる可能性だってあるけど、それでも僕は帆夏と一緒に作っていけたらいいと思ってる」
「……それって、もしかしてプロポーズ?」
「帆夏がそう思うなら、そうかも知れない」
「断言しないところも、伸一さんらしいね」
「おじさんだから、弱気だしずるいんだよ」
「そういう繊細なところも、大好きだよ。全部が全部、好きだから」
「……」
「伸一さんがいまの生活を続けたいなら、俺が伸一さんのところに行けばいい。俺は、ずっと伸一さんのそばにいたいし、片時も離れたくないから」
「……」
「どこまでもしつこく追っかけて、『もうくっつくな』って呆れられるくらい、そばにいるよ。伸一さんが伸一さんらしく生きるように、俺も俺らしく生きたいから」
「……」
「だからもう、伸一さんは、逃げ道なんて作らなくていいよ」
「……」
「それを踏まえた上でさっきの話だけど、……ポロポーズと受け止めていいよね?」
「……いいよ」
 大きなため息をついた後、あきらめたようにそうつぶやいた伸一さんに、俺はにっこりと笑いかけた。


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Posted on 2017/10/03 Tue. 12:00 [edit]

category: ルート9

thread: BL小説  -  janre: 小説・文学

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