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Harmonia

オリジナル小説

悪い男 7 


 長い時間を掛けて、愁のなかで一度達した後、荒い息がやっとおさまって、何度もキスしたり頬を撫でたりして、さっきまでひとつに繋がっていた余韻を味わっている、あまく蕩けそうな時間だった。
 出会ったあの日のことを思い出して、愁の髪に触れてみた。ふわりとやわらかな感触はあの頃とまったく変わらない。記憶を辿るようにそのまま撫で続けていたら、猫のように目を細めて、くったりと肩におでこを預けてくる。

 このまま眠りに落ちてしまいそうな、規則的な吐息が伝わってくる。身体じゅうくまなく愛撫されて、ぐちゃぐちゃに泣き叫んで、俺の手や口のなかで何度も達したから、きっと眠くて堪らないのだろう。子どものように手脚が温かくて、ただ触れているだけでも心地良かった。
 抱きしめる腕に力を込める。あの日出会ってから、狂おしいほどに求め続けた存在が、いまこうして、腕のなかにいる。

 いま、この瞬間になら、死んでも後悔しないな、と思う。いつ殺されるとも知れない身だから、こんな安らかなひとときが、たまらなくしあわせで、いとおしい。


 愁と出会ったあの日の喜びは、言葉では到底言い表せない。
 ようやく満たされると思った。散り散りになった身体のかけらを集めて、やっと本当の人間になれる気がした。
 愁のすべてが欲しいと思った。心も、身体も、全部自分のものにしたい。いっそ食べてしまいたいとすら思った。
 それからの俺は、愁をこの腕で抱くために生きてきたと言っても過言ではない。
 どんなことをしても、かならず愁を手に入れてみせる。
 愁の髪に触れたあの時、俺はそう心に誓ったのだ。
 

「このまま休む?」
 と訊ねたら、なかば眠っていた愁が勢いよく顔を起こし、嫌々をするように首を振った。
「……だって、もったいない」
 そう言って、愁の方からキスしてきたので、驚いて愁の顔を見つめる。
 愁は俺の視線に頬を赤らめながらも、目を逸らさずに、言葉を続けた。
「今夜から離ればなれだから、……晃生でいっぱいにして欲しい」
 いまだかつてない積極的な台詞に、俺の理性の糸がぷつりと切れる音が聞こえた。


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Posted on 2017/12/18 Mon. 00:00 [edit]

category: 僕を愛したスパイ

thread: BL小説  -  janre: 小説・文学

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