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Harmonia

オリジナル小説

呼気 9 


 なおも背を向けたままの城に、もう一度叫ぶ。
「城、」
 俺の呼びかけに観念したのか、振り返った城が、ゆっくりとこちらに近づいてくる。

 城と、まっすぐに向き合う。
「顔赤い。……熱、かなり高いんじゃないか? 寒いから早くベッドに戻れよ」
 そんな城の言葉を遮るように、俺は言った。
「お願いがある。……俺と、一緒に寝て欲しい」
 
 俺の言葉に、城は一瞬大きく目を見開いた後、困惑した様子を隠さぬまま笑みを浮かべる。
「なんだよ、熱で弱気にでもなったのか? 薬、買っておいたから。それ飲んで、さっさと寝ろよ」
「城、あの人形。……お前が言うように、何かが足りないんだ。それが分からなくて、俺も悶々としてる。だから、お前で確かめたいんだ」
「今は自分の身体のことだけ心配しろよ。……帰る」
 吐き捨てるようにそうつぶやいて、振り返ろうとした城の腕を、強く掴んだ。
「……」
「どうして、お前は……」
 まるで恐ろしいものでも見たような、怯えた顔が、俺を見つめ返した。


 胸が痛くて、苦しい。息が詰まりそうになりながら、それでも必死で声を絞り出す。
「なんで、俺のこと避けるんだよ。……昔っから、お前はそうだ。俺はお前の親友だと思ってるのに、お前は心を開かない。もっと話したいことがたくさんあるのに、お前がそれを許さない」
「……」

 俺を見つめる城の瞳が、「痛いから、止めてくれ」と訴えていた。でも、一度口から溢れた言葉は、もう止まらなかった。

「心のどこかで、お前は俺と同じ道を進んでくれるんじゃないかって、このままずっと一緒にいられるんじゃないかって、期待してた。でもお前は、俺になにも告げずに、たったひとりで自分の道を決めてしまった。俺は、お前から取り残されたまま、この気持ちをどこに持っていけばいいのか分からない」
「……」

「見知らぬ男とは遊ぶくせに、俺の愚痴ひとつにも付き合ってくれない。それならそれで、いっそこっぴどく嫌われた方が楽なのに、心配なんてしてくれない方が、ずっと楽なのに。……こうしてお前はまた現れる」
「……」
「……俺はお前に、どうすればいい?」
 そこまで言いきって、猛烈な羞恥心が襲ってくる。俯いて、後悔の嵐にただじっと耐えていた。


 息が止まりそうなほど、長い時間だった。
 はあ、と大きなため息が、項垂れたままの耳に響いて、俺は顔を上げた。

「どうすればいいかって、……お前、いま自分が言ってること、本気で分かってんの?」
「分かってない。……分かってたら、こんなこと言うはずないだろ」
「確かに、そうだろうな」
 そう言って、城は、ふっと表情を緩めた。

「鳥居、」
 これまでとは違う、明らかに熱を帯びた瞳が、俺を見つめていた。
「言っておくけど、誘ったのはお前の方だからな。……いまさら逃げるなよ」
 それだけ言うと、伸びてきた右腕が、俺の頭を抱き込む。
 そのまま胸にぐっと引き寄せられ、力の限り抱きしめられた。


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Posted on 2018/01/07 Sun. 09:14 [edit]

category: 呼気

thread: BL小説  -  janre: 小説・文学

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