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Harmonia

オリジナル小説

あかい糸 15 


夜明け前に起きて、もう一度抱き合った。

「ごめんな、痛かっただろ」

櫟の左肩から血が滲んでいる。平気、と櫟は笑ったが、くっきりと跡の残る傷口が痛々しい。

静まりかえった宿で、今度こそ声を我慢しようとして、思わず櫟の肩にがぶりと噛み付き、そのまま絶頂を迎えてしまった。当然途中から力の加減なんか忘れて、力任せに食らいついていた。

「一成がそれだけ気持ち良かったってことだろ。俺は満足」

「朝から激しすぎだ」

照れくさくて悪態をついたけど、本当に気持ち良すぎるのだ。僕は櫟とのセックスに骨の髄まで溺れて、溶けきっている。きっともう櫟なしでは生きていけない。そんな危険な依存だ。

僕は櫟にしがみつく。

「こんなの、どうしよう」

溜息混じりに呟いた僕に、櫟がキスをする。

「大丈夫。俺がずっといる」

「…本当に、ずっと?」

「本当に。約束する」

「じゃあ、大丈夫な気がする」

そうやって、僕は自分を納得させる。色々考え始めるときりがない。今、この瞬間の気持ちだけ信じる。そうやって生きていく。


シャワーを浴びてから、宍道湖まで散歩した。まだ空の色が薄く、人通りもまばらで、涼しい風が吹き渡る公園で僕は並んで座った櫟の肩に凭れかかって、小舟が行き交う湖の美しい水面を眺めた。

「いつかまた来よう」

櫟が頷く。

「うん。必ず。俺、この街が好きになった」

「僕も」

僕たちは、きっとこの景色をいつまでも忘れないだろう。二人の大切な思い出として、いつまでも心に刻まれているのだろう。そうして櫟との時を重ねるごとに、思い出がどんどん増えていく。いつか引き出しに収まらないくらい、たくさん。僕はそれを、とても楽しみに思った。



櫟のリクエストで昨日の茶屋でもう一度ソフトクリームと抹茶パフェを食べてから、僕たちは電車に乗って出雲大社へと向かった。到着したのが十四時前で、すっかりお腹が空いた僕たちは真っ先に出雲そばを食べに行った。そば屋は平日で昼時を過ぎたにも関わらず大勢の観光客で賑わっている。十五分ほど待ってから、相席でそばを食べた。一番量の多い五段盛りを注文する。それぞれに違う薬味がのっていて、甘い出汁の冷たいそばはのどごしが良くて二人してあっという間に平らげた。隣の中年女性たちに「いい食べっぷりねえ」と感心され、大きなかまぼこを分けてくれる。ありがとうございます、と元気よくお礼を言ってから、それも美味しく頂いた。

鳥居をくぐり、松並木を歩いて拝殿に向かう。見たこともないような太さの注連縄に驚いた。二人して、すごいすごい、と言い合い、ガイドブックで確認しながら、辿々しく参拝した。

「これで俺たちは大丈夫」

櫟が満面の笑みを浮かべて言う。

「縁結びの神様なんだろ、ここ。俺と一成のことよろしくお願いしますって、お願いしたから」

櫟が僕の手を握る。

「でも俺たちは最初から、結ばれてた」

自信たっぷりな表情で言い切る櫟の様子に、僕は笑った。

「なんか、赤い糸みたいだ」

「赤い糸?」

何それ、と櫟が首を傾げた。

「運命の人とは生まれる前からお互いの小指が赤い糸で繋がってるって話。伝説みたいなものかな」

「へえ、面白いな、それ」

櫟が僕の手をとる。

「こんな風に」

僕の小指と自分の小指をぴったりとくっつける。

「このままぐるぐる巻いて、ずっとくっついていられたらいいのにな」

「嫌だよ。不便すぎる」

僕たちは笑いながら歩く。これからもずっと繋がっていますように、心の中で、そう願いながら。


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Posted on 2013/07/23 Tue. 23:40 [edit]

category: あかい糸

thread: BL小説  -  janre: 小説・文学

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